第8回 審査講評
TYサポート・プログラムの第8回クラシック・レコーディング支援は、これまでと募集および審査方法を変更しました。募集は年1回とし、審査方法も書類による第一次審査と音源による第二次審査という、2段階の審査によりサポート対象作品を選定するものとなりました。
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第一次審査は2009年9月末日をもって締め切られ18作品を選定し、10月中旬に通過者にのみ通知。第一次審査通過者から提出されたサンプル音源等をあわせ、審査員各氏により個別の審査が行われた後、2010年 1月13日(水)に審査員合同の審査会を開催し、以下の4作品が今回のサポート対象作品として選定されました。
◎『ディドーネの嘆き(仮)』 (ロべルタ・マメリ/ソプラノ、波多野睦美/メゾソプラノ、つのだたかし/リュート、キタローネ)
応募者:ダウランド アンド カンパニイ
◎『ショパンのピアノで紡ぐ 時代の色と薫り(仮)』 (平井千絵/フォルテピアノ)
応募者:平井千絵
◎『松平頼暁:24のエッセーズ』(中村和枝/ピアノ、松平頼暁/作曲、ピアノ)
応募者:クラヴィアーレア
◎『ピアノ五重奏 マイ・ハート弦楽四重奏団+藤井由美 II』 (マイ・ハート弦楽四重奏団)
応募者:マイ・ハート弦楽四重奏団
今回から二段階審査を行うことにより、第一次審査は企画の意図やプログラム内容などをポイントに選考され、第二次審査ではそれらを踏まえた上での音による選考となりました。二次審査に進んだ作品は企画内容、演奏レベルともに高レベルで、選考は難しいものとなりました。
その中で選定された『ディドーネの響き(仮)』 については、昨年初めて日本に紹介されたこの演奏家によるCDが非常に高いクオリティであったこと、また、まだ日本ではあまり名前が知られていない、実力ある海外の若手演奏家を、日本の演奏家のコラボレーションという形で積極的に紹介していく制作者の姿勢も高く評価できると、サポートが決定しました。
平井千絵氏の『ショパンのピアノで紡ぐ 時代の色と薫り(仮)』はショパンの時代に使われていた楽器、フォルテピアノでショパンを中心とするその時代の作品を演奏し、時代の空気感を表現するという、意欲的な企画が審査員に高く評価され、今年がショパン生誕200年であることや平井氏が将来を嘱望される若手演奏家であることからも、この作品が発売される意義は大きいであろうと、選定されました。
『松平頼暁:24のエッセーズ』は、演奏者でもある松平頼暁氏が2000年から2009年にかけて作曲し、2009年に初演されたばかりの<24のエッセーズ>を収録。楽曲と演奏者2人のレベルの高さが際立ち、サポートが決定しました。
『ピアノ五重奏 マイ・ハート弦楽四重奏団+藤井由美 II』はそれぞれに音楽に携わって活躍しつつ、広島県を拠点に地域に根差しコンサートを開いてきた、弦楽四重奏団が企画したピアノ五重奏の作品で、演奏レベルもさることながら、新たな挑戦の意欲が感じられる本作への支援は意義があるであろうということで選定されました。
既述のとおり、企画内容、演奏レベルともに高レベルの作品が集まり、演奏家や制作者の芸術性の粋を結集した企画であることが感じられましたが、今回選定された作品は、意欲的な挑戦、そしてリスナーが手に取り聴いてみたいと思うような訴求力という観点で特に優れていたと言えます。全体的に既視感の強い作品が多かったという審査員の意見もありました。
CDの市場が年々縮小し厳しい経済状況にある昨今、CDを発売する以上、ひとりでも多くの方に聴いてもらうための努力、工夫も求められます。企画・制作のみならず、販路やリスナーの受けとめ方なども熟考の上でのご応募を切にお願い申し上げます。
次回の募集についてはは2010年6月ごろ、本ホームページ上に募集要項をアップする予定です。 |